「お、お邪魔しまーす…」
そろそろと玄関のドアを開けて中を覗くと人の気配がなくシーンとしていた。
おばさんいないのかな…
一応、遙に入ってもいいって言われたから靴を脱いでリビングへ向かう。
昔は遠慮なく上がって遊んでたのにな。
そういえば、遙とちゃんと話さなくなったのはいつ頃だっけ。
お隣さんで、クラスは違うけど同じ学校なのに。
「おい」
「ひゃあ!」
そんなことを考えていると急に後ろから声がかかって、思わずタッパを落としそうになる。
「…なにやってんだよ」
バランスを崩したタッパを遙の大きな手が掴んで、なんとか床にぶちまけるという事故は防げた。
「ご、ごめん…」
「お前、これでもし落としたら1週間床掃除させるからな」
「……はい」
ひょいと私からタッパをとりあげて、おかずの唐揚げを一口頬張る。
私はそれを下から見上げながら、ジャイアンめ…と思ったのは一生内緒にしよう。
