ここでキスして。





………………



放課後、クラスのみんなが帰っていく中、一人日誌と向かい合っていた。





「ごめん佐倉さん、手伝うよ」






黒板の掃除を終えた榛名くんが、私の前の席に座って日誌を覗きこむ。




「ありがと」




とりあえず今日の時間割を記入していく。





「あれ、三時間目って何だったっけ?」


「現国。俺叩き起こされたからすげー覚えてる」


「あ、そっか。現国の関ちゃんって居眠りとか内職してるの厳しいもんねー」





私も前に友達とノートの切れ端使って手紙書いてたらめっちゃ怒られたっけ。



普段はぽっちゃりしたプーさんみたいな優しい顔してるのに、怒るとかなり怖い。


ペナルティでかなりの課題出されるし。







五時間目の英語まで記入し終えて手を止める。







今日あった出来事って、何書こう…


特に何もなかったしな。


うーん、でも何か一言くらい書きたい。







とりあえず先に日直担当者の欄に榛名くんと自分の名前を書く。






榛名真人、

佐倉美弥
















「美弥ちゃん」

















…………へ?




シャーペンの芯がポキリと折れた。












「……あ、やば。俺今声に出てた?」


「……う、ん…」








びっ、くりした。


急に名前で呼ぶから。

でもなぜか榛名くんの方がびっくりした顔をしてる。







「あー……ごめん」





固まる私を見て、ほんの少し照れ臭そうに目をそらす榛名くん。






「日誌見てたら、なんか勝手に口に出てた…」





日誌に書かれた私の名前を見て呟く。




もう一度ごめん、と謝る榛名くんにブンブンと頭を横に振った。