…………
授業中、先生の読む教科書の難しい言葉の羅列が眠気を誘う。
相変わらず後ろの席の榛名くんは机に突っ伏して眠っていた。
振り返らなくても分かるのは、背中に榛名くんの頭がかすかに当たるから。
榛名くんの呼吸のリズムを背中で感じて、なんだか起こしてしまいそうで動くに動けない。
朝も私が来る前から寝てたのに、よく寝るなー。
…あ、だから背が高いのかな。
寝る子は育つってやつ。
しかもビックリなことに、こんなに寝てばっかなのに、私より成績良いし。
神様不公平すぎる。
前返却された英語の小テスト、私より点数が良かったのチラッと見えちゃったし。
「……っ」
榛名くんが頭の位置を動かしたのか、背中にグイッと押し付けられる。
…あーもう、これだけのことで動揺するな自分!
榛名くんの頭がくっついている背中が妙に熱い。
なにドキドキしてんの…
気を紛らすために教室の外を見ると、どこかのクラスがグラウンドでサッカーをしていた。
チームに分かれて対抗戦してるのかな?
遠くから見ても結構本気でボールを取り合ってる。
「……あ、」
遥だ。
遠くからでも分かる幼馴染みの顔。
サッカーしてたのって、遥のクラスだったんだ。
なんとなくそのままグラウンドを見ていたら、パスが回ってきた遥が、敵チームをどんどん追い抜いてシュートを決めていた。
キレイな曲線を描いて、ゴールに入る。
「よしっ」
思わずグッと右手を握り締めて小さく呟いた。
ナイスシュート!
遥、昔から運動神経良かったからな。
心の中で喜んでると、ふいに遥がこっちを向いたような気がした。
