私が否定しても、伊織ちゃんはハイハイっとあしらうだけで、親指を突き立て「グッドラック」とエールを送る。
「伊織ちゃーん…」
「じゃ、私このあと彼氏とデートだから」
涙目になって訴える私を簡単に無視して帰る準備を整えた伊織ちゃんは、他校にいる彼氏さんと約束があるらしく、「進展があったら教えて!」と最後まで楽しそうな顔をして帰っていった。
完璧に誤解されてる…
ていうか伊織ちゃんは放課後デートかあ。
羨ましい。
帰りながら、ちらほらとカップルが並んで歩いてるのが見えた。
年齢イコール彼氏いない歴の私にとって、放課後一緒に帰ったり寄り道したりするだけでも憧れる。
伊織ちゃんは私に春が来たって言うけど、そもそも私と榛名くんじゃ釣り合うわけないよ…
榛名くんには、もっと綺麗で清楚な人が似合うと思うし、すでに彼女がいたっておかしくない。
「彼女か…」
はあ、と溜め息をつく。
絶対いるに決まってる。
…ん?ていうか何で地味にショック受けてるの私。違う違う。
これじゃ榛名くんのこと、伊織ちゃんの言う通り気になってみるみたいだ。
