「あっ……!」
「亜瑚っ」
すかさず湊が私の腕を掴む。
だけどそれも虚しく、私たちは重力に逆らう間もなくふたり一緒に床に倒れこんだ。
ドンッと派手な音を立てて、勢いよく腰を打つ。
「いった……」
「大丈夫か?」
私に覆いかぶさる体勢になっていた湊が、上体を上げて、私を見下ろす。
「うん、なんとか……」
腰をさすりながら答える。と、その時。
「亜瑚っ……。って、え? 如月、くん……?」
頭上から、混乱に染まった聞き慣れた声が降ってきた。
この声は……やっぱり……。
床に寝転がったままおそるおそる顔を上げると、そこには驚いたように目を真ん丸に見開いた玲奈が立っていた。
あはは……。そりゃ驚くよね……。
私の家になぜか接点のなさそうな高校イチモテるクラスメイトがいて、その彼が私に覆いかぶさっているのだから。


