咄嗟に入り口に顔を向ければ、ひとりの男子が目を丸くして、私と湊を見て立っていた。


まずい!と慌てて手を離し、湊から距離を置こうとした時。


「あ、祐馬」


湊がその人に向かって声を掛けた。


緊急性を微塵も感じさせない、涼やかな声音。

全然焦っていないその様子その様子に、改めてまじまじとその男子を見つめると、彼がいつも湊と一緒にいる男子だということに気がついた。


「遅かったな」


「ごめんごめん、掃除が伸びちゃってさ-」


「え?」


ふたりのやりとりについていけず、湊を見上げると、そんな私の様子に気づいたのか、こちらに視線を返してきた。


「俺が呼んだんだよ。あんたのこと紹介しようと思って」


「湊が?」