――それから、俺たちは他愛のない話をしながら食事をした。
ふと、食事をする手を止めて、改めて今の状況を鑑みる。
不思議だ。昨日出会ったこいつと、今俺は食卓を囲んでる。誕生日を祝われている。
誕生日、か……。
「……誕生日ってなんで祝われるんだろうな」
ふと、心の声が口から漏れた。思わず声に出た独り言。
亜瑚が目を丸くして顔をあげる。
「湊……?」
「あ……、別に、なんでも……」
変なことを口走ったことに気づき、思わず口ごもる。
やばい、俺、今変なことを言った。
ごまかすように、炭酸水が注がれたグラスに口をつけた時。
「……それはね」
不意に声が届いて、反射的に向かい側に座る亜瑚を見ると、亜瑚は微笑んで俺を見ていた。
「『生まれてきてくれてありがとう」って感謝してるからだよ」
あ……。
穏やかに紡がれる声が、俺の傷口を覆っていく。