そんなことを考えながら歩いていると、やがて階段に差し掛かった。

2年生の教室は2階にある。


階段の中腹辺りまで登った時。

私はふと、玲奈のスクールバックからなにかが落ちそうになっていることに気づいた。


「あ、玲奈、扇子が」


学校から帰って、そのまま舞踊の稽古をするのだろう。玲奈が愛用する扇子が、3分の2ほど飛び出してしまっている。


「え?」


玲奈がこちらを振り返った反動で、扇子が落ちる。


いけない、玲奈の大事な扇子が……!


宙を舞う扇子を、腕を伸ばしてなんとかキャッチ。


ほっと安堵するのも束の間、私はそのポーズのままはたと固まった。


ん? そういえばここ……階段、よね?


案の定、足下がおろそかになった体が階下に向かって大きく傾いた。