【湊side】


チャイムが鳴り、今日の授業が終わった。

教室は、部活に行くクラスメイトや話に花を咲かせるクラスメイトで、ガヤガヤと騒がしい。


ちらりとさりげなく後ろの席を振り返ると、亜瑚は……いない。

亜瑚の席はいつの間にかすっからかんになっていた。


慣れない道をひとりで帰れんのかよ?

あいつ、なにも考えずに突っ走りそうだよな……。

迷子になったとして、こっちが迷惑被るのなんか、ごめんだ。


『迷子になっちゃったぁー! 助けて、湊ぉー!』


そう言って泣きながら電話してくる光景が、容易に想像できる。


「はぁー……」


手のかかる嫁に、大きなため息をついた時。


「湊」


不意に名前を呼ばれて振り向くと、幼なじみの武原祐馬が立っていた。

大きな黒縁メガネと、鮮やかな金髪が祐馬のトレードマークだ。