『それならいいけど。変なこと考えてるんじゃないかと思ったから』


私のこと、気にしてくれてたの?


『ありがとう。心配してくれて』


『別に』


『まったく素直じゃないんだからー』


『うるさい。でも、なんかあったら言えよ。
一応、目の前の席に旦那がいるんだから』


『頼もしいね、旦那さん』


返信しながら思わず頬を緩めたその時、チャイムが鳴った。

チャイムと同時に、待っていたかのように教室に入ってくる数学の先生。


ちくちくとささくれみたいだった私の心は、柔らかい毛布にくるまれたように温かくて。


目の前の湊の背中が、頼もしく、そしてとても大きく見える。


……実は今夜、湊にサプライズを計画している。

よぉーし! 今晩の予定、絶対成功させてみせるんだから!


ふつふつとやる気がみなぎってきて、まわりから見えないように、私は小さくガッツポーズをした。