「おい」
「わっ!」
背後から突然声を掛けられて驚き振り向くと、如月くんが迷惑そうな顔で耳を塞いだ。
「いちいちうるせ……」
不機嫌さを隠そうともしない声音に、思わずびくっと肩をすくめる。
「……な、なに?」
「そんなとこで、口開けてぼさっと立ってるなよ」
そこで私はふと、如月くんが私の荷物をさりげなく持ってくれていることに気がついた。
「あの、荷物っ……」
「こんな荷物あんたひとりじゃ持てないし。
ほら、ついてこいよ」
あれ……? 如月くん、優しいとこもあるじゃない。
「ありがとう!」
嬉しくて笑顔でお礼を言うと、如月くんは煩わしげに視線を逸らした。
「……うるさい」
うっ……。相変わらずローテンションな返事だ。
でも、ここでめげるわけにはいかない。
お父さん、お母さん。私、新婚生活頑張るからね……!と心の中で呼びかけ、如月くんの背中を追った。


