思い返せば、今までいろんなことがあった。


初めて出会った時は確か、亜瑚が落ちてきたんだった。

階段の上から落ちてきて、俺が抱きとめて。


それから同居が始まって、亜瑚は出会って間もない俺の誕生日を祝ってくれた。

そして『生まれてきてくれてありがとう』と、俺がずっとずっと求めていた言葉をくれた。


俺の過去を知った時も全部受け止めて、そばにいさせてと、そう言ってくれた。


愛のない結婚なんて、どうせすぐ離婚して終わりだと思ってた。


でも、亜瑚は俺に愛を教えてくれた。

孤独だった俺を救ってくれた。


こんなにも心が満たされることがあるなんて、亜瑚に出会わなかったら、多分一生知らずに生きていた。


ありがとう、亜瑚。


愛しい妻を起こさないように心の中でそう呟き、頬にそっとキスを落とした。