「バイトしてるの、バレなかった?」


「全然。塾行くって嘘ついたら、見事に信じた」


「あはは! 亜瑚ちゃんらしいや」


「あいつ、ほんとバカがつくくらい素直すぎるから」


亜瑚のことを思い出してくすりと笑うと、祐馬がテーブルに肘をつき嬉しそうに微笑んだ。


「湊、やっぱり変わったな☆」


「え?」


変わった? 俺が?


「よく笑うようになってさ、雰囲気も柔らかくなった。
学校の奴らもみんな、そう言ってるよ」


そんなふうに言われてるなんて、初めて知った。


「今の湊の笑顔は、亜瑚ちゃんが作ったんだな。
亜瑚ちゃんに出会うまでは、笑うことも忘れたみたいに、いつも自分の感情押し込んでたじゃん?」


だれより俺を見てきた祐馬に言われ、返す言葉を失う。


たしかに、母さんのことがあってから、こんなふうに笑うことを忘れていたかもしれない。

……亜瑚に出会うまでは。