そんな私に、ふたりは揃って目を丸くする。
「あ、亜瑚……!? 亜瑚の人生がかかっていることなんだぞ!?」
「いいの! それでちゃんと工場が立て直してもらえるなら!」
「――あぁ! もちろんそれは約束するよ、お嬢さん」
私の決意表明に答えるように、不意にどこからか聞いたことのない声が返ってきた。
「え?」
声が聞こえてきた方――工場の入り口を振り向くと、そこに知らないおじさんが立っていた。
古びた工場が似合わない、いかにも品のいい紳士って感じの男の人だ。
「先輩じゃないですか!」
弾かれたように、お父さんが驚きと動揺に満ちた声を張りあげる。
ということは、このおじさんが資金援助してくれる人なんだ……!
先輩らしいけど、お父さんよりよっぽど若く見える。


