「はぁ……」
トイレの水道でバシャバシャと顔を洗った私は、小さくため息をついた。
ちょっと落ち着いたかな……。
私の心を覆っていた厚く黒い雲は、ほんの少しだけ薄くなっていた。
玲奈にも心配かけちゃったし、早く戻らないと。
気持ちを引き締めるように、頬に両手を当てて笑顔の練習をする。
……よし、笑える。大丈夫。
グラウンドの方から、昼休憩を知らせるアナウンスが聞こえてきて、足が知らず知らずのうちに早まっていた。
近道で戻ろうと、グラウンド横の木陰を通りかかった時。
「……私、如月くんが好き……!!」
そんな声が聞こえてきて、思わず足を止める。
この声は……栞ちゃん?
木陰に近づいて、声のした方を見た私は、思わず目を見張った。
「え……?」
視界に飛び込んできたのは、栞ちゃんが男子とキスをする光景。
男子の顔はここからは反対になって見えないけど、私が見間違えるはずない。
そのミルクティー色の髪の後ろ姿は、間違いなく湊――。


