「バク転って、如月くんすごいの引いちゃったわね」
玲奈が小さく耳打ちをしてくる。
「ほんと……」
そう言いかけて、どこかでぷつんと声が途切れた。
なぜって、グラウンドのど真ん中、湊が華麗にバク転を決める姿が目に飛び込んできたのだから。
湊の体が宙に舞ったその瞬間は、まるでグラウンド中の時間が一瞬止まったみたいで。
そして湊が着地をした途端。
「「「「「……きゃー!!!!!!」」」」」
すさまじい黄色い悲鳴が、グラウンドを包み込んだ。
歓声の中、私はただただ湊を呆然と見ていた。
着地をして「危ね」と小さく舌を出した湊。
1位でゴールテープを切り、笑顔で祐馬くんとハイタッチした湊。
そんな湊が眩しすぎて、かっこよすぎて──。
いつの間にか湊は大勢の人に囲まれていた。
……私の入る隙もないくらい。
……なんでだろう。こんなに遠くに感じるのは。
私と住む世界が違うって、痛いほどに突きつけられたみたいで、湊が1位を取ったというのにちょっとだけ……苦しい。


