「ただいま」
頭を冷やすつもりが、如月湊のせいで逆に疲れて帰ってきた私は、お父さんとお母さんに聞こえるように言いながら、工場のドアを開ける。
そんな私の元に、ふたりが心配そうに歩み寄ってきた。
「亜瑚、さっきは突然あんなことを言ってごめんね」
「なぁ、亜瑚。母さんと話し合ったんだけど、結婚はやめよう。
亜瑚を嫁がせるなんて、やっぱりダメだ」
「え?」
「母さんも父さんも、亜瑚には好きな人を見つけて、その人と幸せな人生を歩んでほしいのよ」
お父さんとお母さんの私を思ってくれる気持ちに、じんわり熱を持つように心が温かくなる。
心配してくれて、ありがとう。
でもね、亜瑚は決めたんだよ。
私、家族を守りたいの。
大好きなお父さんとお母さんの笑顔を守りたい。だから──。
「私、……結婚する!」
意思の強さからか、思ったよりも大きな声が出て、工場に響いた。


