「それは無理……っ。私の心臓止まっちゃう」
「止まったら、俺が助けてやるし」
「もう……今日の湊、意地悪……」
「俺が意地悪なの、知らなかった?」
すると下唇を噛みしめ、観念した様子の亜瑚。
「じゃあ……目、瞑ってて……?」
亜瑚に従い目を瞑ると、躊躇いがちにそっと、唇に温かく優しい感触が落ちてきた。
そのキスは、下手だし、短い。
でもこんなに幸せなキスって、この世にないと思う。
目を開けると、睫毛が触れそうなほどの近さに、真っ赤な亜瑚の顔。
「もう……許してくれる……?」
「じゃあ、頑張った妻にお返し」
亜瑚の頭に手を回し、引き寄せて頬にキスをする。
唇を離すと、亜瑚が目を細め、上気した頬をほころばせた。
「ふふ。湊、好き。大好きっ」
「そんな可愛い顔したら、止まらなくなる」
「なっ……んッ……」
亜瑚の声を遮って、フローリングに押し倒すと、俺はまたキスを落とす。
「ふふ」
「笑うなよ」
笑い声を漏らしながら、俺たちは唇を重ね合った。