「じゃ、俺行くから」


先に登校する準備を終えた湊が、玄関の方で声をあげた。


「あ! ちょっと待って!」


私は作りたてのお弁当を持って、急いで駆け寄る。


「はい! お弁当」


「あ、持ってくの忘れてた。さんきゅ」


「ふふ、危ないなぁ」


同棲してるのがバレてはいけないから、こうやって毎日湊が先に家を出て、私が時間を空けて家を出るようにしている。

でもやっぱり、一緒に登校とかしてみたいなぁ……。なんて、湊がスクールバッグにお弁当を入れる姿を見て、ふと思う。


すると、バッグにお弁当を入れた湊が顔を上げ、自分の唇を人差し指で指した。


「……ん?」


意味がわからず首を傾げると。


「ん?じゃなくて。
行ってらっしゃいのチューはないの? 奥さん」