フライ返しを手に、湊の腕の中で身を固めていると、湊がくすりと余裕げに笑う。
「ふっ。緊張しすぎ。心臓の音、すげー聞こえる」
「そ、そりゃそうだよっ。いきなり抱きしめてくるんだもん……」
「こんなことでドキドキしてたら、亜瑚の心臓もたないかも」
「えっ!?」
「俺、理性保てる自信ないし」
耳元で囁かれる溶けそうなほど甘い声音に、思わず顔が熱くなる。
湊、すごく攻めてくる……!
「旦那のために、うまい朝食を作るように」
そう言って、湊の腕が私を解放する。
私を包み込んでいた甘い香りが遠ざかっていく。