私はおそるおそる、湊の背中に手を回した。


「湊……?」


「……そばにいさせてくださいは、こっちの台詞だよ」


「え……?」


いつも涼やかな湊の声が、心なしか震えてる。


「俺……ずっと欲しかったんだ。
俺の帰りを待ってくれてる家族。温かさに包まれた家。誰かと過ごす幸せな時間。
それを、亜瑚は全部くれた。
亜瑚と出会って俺の心は孤独じゃなくなった」


「……っ……」


「初めは亜瑚のこと愛せるなんて思ってなかった。
政略結婚なんだから、愛なんていらないって。
でも、今は亜瑚がいなきゃだめだ。いつの間にかあんたが大切な存在になってて、初めて誰かを愛しいと思った」


「湊……」


湊が体を離した。

熱のこもった瞳で見つめられ、心臓がどうしようもなく揺さぶられる。