【湊side】
「ただいま……」
そう言ってリビングに入ると、ガランとしている。
亜瑚は先に帰ったはずなのに、その姿は見あたらない。
妙な胸騒ぎがして、急いで亜瑚の部屋のドアを開けると、そこにはなにひとつ荷物がなかった。
もしかして、出て行ったのか……？
いや、もしかしなくても、亜瑚が出て行ったことはだれの目から見ても明らかだった。
りビングに戻ると、そこは変わらずすごく静かだった。
あいつが来るまでは、誰もいないことが当たり前だったのに。
ひとりが当たり前だったのに。
なぜだか今は寂しくて、心に穴が空いたみたいな気持ちになる。
