そして、“あの日”がやってきた。
それは、俺が10歳だった時のこと。
母さんはその日もまたヒステリックを起こし、暴れまくっていた。
俺はもう、そんなふうに壊れていく母さんを見るのに耐えられなくなって、後ろから抱きついた。
『母さん! 母さん! やめて!』
すると、母さんは頭上に持ちあげて振り下ろそうとしていたクッションを離し、俺に笑いかけた。
母さんが……また笑ってくれた……。
そして母さんは俺を抱きしめた。
あの大好きな母さんが戻ってきてくれたんだと嬉しくて、俺も母さんの背中に手を回そうとした時、母さんは俺の耳元で囁いた。
『あんたなんか生まれてこなければよかったのに……』


