俺の視界に入ってきたのは、見たことのない男とふたりで買い物をする亜瑚の姿。


それはどこからどう見ても、亜瑚だった。


笑い合うふたりの様子からは、嫌でも親しげな関係が見て取れる。


亜瑚は男の手を引き、店内の商品を見ている。


「ねぇ、これ良くない?」


「亜瑚ちゃん、センスあるね!」


「えー! 拓ちゃんだって!」


屈託のない笑顔を男に向ける亜瑚。


「……っ」


……やめろ。その笑顔を、俺以外の男に見せるな……。


笑いあってることも、親しく名前を呼び合ってることも、全部気に入らない。


俺はその光景を、離れた場所から見つめることしかできない。

床に足が貼り付いてしまったかのように、間に割って入っていくことができない。


心の中から、ドロドロとした、暗く重いものが溢れ出てくる。


そしていつの間にか、俺の頭の中はあの“トラウマ”に乗っ取られていた。


俺は……俺は……。結局また裏切られるんだ……。

また捨てられるんだ……。


また──。