「急にどうしたの? ふたりとも、そんな真面目な顔しちゃって……」
「……亜瑚に話さなくてはいけないことがあるんだ……」
神妙な面持ちのまま、お父さんが口を開いた。
その隣では、辛そうな表情で俯いているお母さん。
そういえば、いつものこの時間はまだ稼働しているはずの工場に、今日は電気がひとつも点いていない。
工場を包む異様な雰囲気から、お父さんの言う“話さなくてはいけないこと”が悪報であることは一目瞭然だった。
なけなしの勇気を振り絞り、おそるおそる尋ねる。
「な、なに……?」
「あのな、実は……」
「うん……」
「うちの工場は倒産するかもしれないんだ」
「え!?」
あまりにショッキングな内容に、ズクンと心臓を鷲掴みにされたような、そんな息苦しさを覚える。
「見てのとおり、経営が厳しくてな……」
そんな……。
そうしたら、私たち家族はどうなるの……?
頭が真っ白になる。
倒産という言葉が、鎖のようになって胸を締め付ける。


