休み時間、湊が祐馬くんの机の元に行ったのを見計らって、私はスケジュール帳を開いた。


「亜瑚、なに見てるの?」


頭上から声が降ってきて顔をあげると、玲奈が微笑んで立っていた。

私はスケジュール帳を顔の横に持ち、声を潜めて答える。


「スケジュール帳! もうすぐ、婚約して1ヶ月だから」


記念日には、こっそりハート印がついている。


「あら、もうそんなに経つのね」


玲奈が口に手を当て、目を丸くする。


「そうなの! ほんと、1ヶ月あっという間だったなーって思って」


すると、玲奈がふわりと穏やかな声を落とす。


「それは、毎日が充実してたってことじゃない?」


「えっ? そうなのかな……」


この1ヶ月、本当にいろいろあった。


目玉焼きにはなにをかけるか、テレビはなにを見るかなんてくだらない言い合いもしたけど、大体じゃんけんや指相撲で決着をつけることになって、険悪になることもなく結局最後は笑っていたっけ。

こうして振り返ってみると、確かに充実していたのかもしれない。