「ただいまぁー!」
玲奈に元気づけられた私は、すっかり機嫌を直して、両親に声をかけるため工場の入り口の錆びついたドアを開ける。
私の家は、自営業で製鉄所を営んでいる。
でも、なかなか経済的にも厳しいのが現実。
小さい会社でも最初は順調だったものの、斜陽産業だからここ最近は経営が厳しくなってきている。時間の問題で外れそうだ。
ガタガタしたドアを、心許なく見上げたその時。
「「亜瑚ー!」」
お父さんとお母さんが、どこからともなくこちらに向かってすごい勢いで走ってきた。
「な、な、な、なに!?」
驚いて逃げ腰になった私は、そこでふと、駆け寄ってきたふたりが神妙な表情をしていることに気づいた。
なんとなく、嫌な胸騒ぎがする。


