「お前ら、ちょっと呼び込みしてこいよ

…可愛い子限定で」

「そーだよ…頼むよ、お前ら」

「結局、そこですか先輩」

私たちの後ろにいるのは、

部活の先輩方7名。

…そうです。

今日は、我が、織原高等学園の入学式。

織高は、最寄りの駅から徒歩20分の

住宅街の中にある。

電車で30分揺られれば都会にでられる。

逆方向に30分揺られれば、

田園風景が広がる。

“おりこう”の愛称通り、

偏差値が高い。けど校則はゆるい。

そして、制服が可愛いことで

有名な高校だ。

ゆかがこの高校を選んだのも、

制服が可愛いから。

ちなみに私がこの高校を選んだのは、

家から近いから。

そして、ゆかと一緒がよかったから。

そんな私たちは、新入生を

うちの部活に勧誘するために、

入学式が終わったばっかりの体育館前に

待機中なのだ。

もちろん、勧誘する気満々なのは

うちの部活だけじゃない。

「サッカー部どうっ??

うち結構いいとこまで行くよ!!」

「野球部で青春しませんかー?」

運動部は、やっぱり男の子から

人気がある。

女子はテニスや吹奏楽が強いな。

華があるし、かわいいし、

青春って感じだもんね。

入部届にサインしてく新入生が

後を絶たない。

…だけど

「先輩…絶対この看板怪しいっすよ」

私がそう言って立て看板を先輩に

向けると、先輩はやたらと

いい笑顔で親指を立てた。

「自信持てチビゆり!

夢がいっぱい詰まった看板だぞ…!」

「…夢って…」


“青春部”

この、わけわからん部には、

さっきから誰も寄ってこない。

通りすがりの人たちは、

『青春部ってなんのギャグですか』

とでも言いたげな目を

夢の詰まった看板に向けるだけだった。


青春部は、青春を謳歌しよう、

という部活である。

だから、自分たちが「青春だ」

と感じれば何をしてもいい。

去年の大きなイベントは、

4月にとりあえず学校で花見。

5月はバーベキュー。

6月は体育祭に命をかけ。

7月、8月はプールに海、花火に夜遊び。

…と、月ごとにイベントを作って、

盛大に盛り上がる。

ハメをハズしすぎて、警察に

追いかけられたことも、

今となっちゃいい思い出だ。

とにかく去年は、若いから

できることをやりまくった。

「これ完全に青春してんな俺ら!!」

と、現部長の智センパイも、

とても満足そうだったし。

それ以外の主な活動は、

特にこれといってない。

毎日、放課後になると、

来たい人だけが部室に集まり、

適当に遊んで帰ってくのがほとんどだ。

去年は、ウノとかよくしたな、うん。

あと、かくれんぼも…。


…とりあえず、

よくわからない部活なのだ。

「おーい、お前ら!

どう? 新入部員来たか!?」

顧問は吉本荒野センセイ、29歳。

通称、カナモっちゃん。

熱血と見せかけてそうでもない、

見かけ倒しな先生だ。

「あっ、カナモっちゃん!

助けてよー」

「無理!!今の若い子、冷たい!!

誰も入ってくんないー」

「あきらめんな!

っつーか俺、これから用事あるから

お前らかまってる暇ねーから」

「自分から話しかけといてそんな…」

なんせ「青春部」なんて

得体の知れない部の顧問を

引き受けてくれるくらいですから、

基本的にはテキトーなのです。

「まぁさー、しょうがないよね!、

うちらの入部も無理やりだったもんね

完全に」

「そう言うなよお前ら…

結果オーライだろ」

去年私たちは、先輩たちに土下座されて

強制的に入部した。

男15人に一斉に土下座されて、

断れるわけがなかった。

まぁ、その時半数を占めてた3年生は

卒業したんだけど。

「お前らもこの部、愛してんだろ!?」

「今は、ね。

最初はなんのギャグかと

思いましたけど」

「……だよな」

“青春部”

…いつも思うが、

よく学校側が認めたもんだ。