「私が生きる、という選択肢は、この状況ではあり得ないことよ」
「ーーでもっわ、ぁたし…は!」
きるが言おうとしている事が分かったように、きるの母は少し悲しい目をして、言う。
「きるが今、幸せで無いのかもしれない。
もしかしたら、お母さんの命と引き換えに生きる価値なんて自分には無いと思ってるのかもしれない」
当たりだ、というように、きるは黙る。
きるの母は、力強く続けた。
「でもね。お母さんはきるにただ生きて欲しいの。
お母さんが居なくてしんどい思いをするかもしれないし、寂しい思いをするかもしれない。
だけどね」

