微妙な空気を打ち砕いたのは、迷いのない、きるの母の声だった。 「ーーーじゃあ、この子を生かして」 「っ!!お母さんっ!!」 きるは、生まれて初めて「お母さん」という言葉を口にした。 はっとしたように、きるの母がきるの方に振り向く。 「お母さん。お母さんが生きてよぉ!!」 きるがわあっと声を上げて泣く。 きるの母は、厳しい声でそれを否定した。