「……ねぇハルくん?」

「………」




……………また無視された。
さっきも無視、その前も無視、その前の前も無視。

せっかくのお家デート(本当はわたしが急に押しかけた)なのに、……どうやらハルくんには、わたしは映ってないらしい。


「………うぅっ…ハルくんのハゲ…」


「………」


「ひいいぃっ…!」



こ、怖い……!!

ギロリ、メガネ越しでわたしを睨むハルくんは、まるでミ〇ミの帝王に出て来るボスを取り巻くチンピラみたいに鋭い睨みだった。


……えぇ、少なくとも彼女に向けるような目じゃないです。



もういいもんねっそうふてくされ、ハルくんの部屋にある本棚の物色を始める。

何か面白い本があればなあ、くらいの気持ちで。


――――本当にこのときは、そのくらい軽い気持ちだったんだ。


―――――――――――――――――――――――――…




………ダメだ、さすが理系男子……。

訳の分からない参考書やらで本棚はいっぱい。

『細胞のメカニズム』って、なにそれ……

見るからにつまらなさそうだけど、こんな本をハルくんは何冊も読んで勉強をしてるんだなぁ。


てっきりえっちな女の人の本とか見つけて、弱みを握ろうと思ってたのに。

そんなときにまでハルくんに感心してしまうなんて、さすがハルくんだ。



だけどやっぱり、ハルくんは取り合ってくれないし、弱みになりそうなのは見つからなかったし。



……つまんないの、なんて呟きながら、わたしは何気なく本棚に備え付けの引き出しをすっと開けた。







――――と。