「なー、梨奈」
やばい!
奏汰だ。
寝るふりしとこ!
「なんだ、寝てんのかよ」
ああ、なんで後ろが奏汰なの?
これじゃドキドキして……。
って、あたし何考えてるの?
いつももっと近い距離にいたのに。
たかがこれくらいの距離。
あたし達にとっては遠すぎるのに。
"それってさ、一番言われたい人がもういるからなんじゃない?子供のころから。ずっとそばにいる人にその言葉を言われたいからなんじゃない?"
昨日の海美の言葉が頭に浮かぶ。
「なーんてな、何狸寝入りしてんだよ?」
そう言ってあたしの頬をつねる。
「な…なんで…?」
なんでわかったの?
「何年お前の幼なじみやってると思ってんだ」
そう言ってあたしの顔をまじまじと見る。
そんなガン見されたら。
恥ずかしくなって、あたしは顔を背けた。
「何なんだよ。こっち向け」
「いや!」
あたしの声があまりにも大きかったのか、
バスの中がシーンと静まり返る。
奏汰も奏汰で頭をガシガシ書きながら席に座った。
怒ったときにやるクセ。
あたし、奏汰を怒らせたんだ。

