「えぇっ、と…………玲央くん…」



「何…?聞こえない」


未亜ちゃんは下を向き少し間があったあと小さく呟いた。
だけど…そんな彼女にも容赦なく動いてしまう、俺の意地悪。




っていうか…本当は聞こえてたけどね。




「…っ。玲央、くん…!」



「ん…?俺が何?」



「~…っ、分かってるくせに…っ」



「分かんない分かんない。…ちゃんと言ってよ」


未亜ちゃんは少し泣きそうになっている気がした。
それでも…俺の意地悪は、もう止められそうにない。




あ~ぁ…。何で俺…こんなにも未亜ちゃんに意地悪しているんだろう…?
だけどあんな満面の笑みで言うから…こうせずには、いられなかったんだ。



全ては未亜ちゃんのせい――。





「…?」


すると彼女は…俺が膝の上で持っていた、そのぬいぐるみを奪い取り自分の膝の上に置き両手でしっかりと握りしめた。



「……玲央くん、の方が…好きだもん…///」


精一杯そう言う未亜ちゃんは…顔を真っ赤にさせている。



「ふふ…」




ほんとダメ。可愛すぎる…。




「っ…!」



「ありがとう。…めちゃめちゃ嬉しい」


そんな未亜ちゃんの姿に自然と口元が緩む。
そして…まだ顔の赤い彼女を抱き締めていた。




てか今さら思った。


相手は、ただの“ぬいぐるみ”なのに…“俺の方が好き”って言われて、
こんなにも喜ぶなんて…俺って、かなり重症なのかも。




「ねぇ…玲央くんは…?」



「え…?何が?」


俺の胸の中で未亜ちゃんが見上げて言う声で我に返る。
瞳がうるうるとしている彼女の顔を見つめ、そう聞く。



「だから……青い空と私…どっちの方が、好き…?//」


未亜ちゃんは俺の顔を見つめたり目を泳がせたりして、そう言った。




なんだ…そういうこと?




「そんなの決まってるじゃん。未亜ちゃんの方が…大好きだよ?」




ちゅ…っ




俺は未亜ちゃんの後頭部に手を添えて…おでこに軽くキスをした――。