「ありがとう。送ってくれて…」



「んーん。てかこれ…送ったことになるの?」



「へっ…分かん、ない…」


私はそう言って視線を落とした。



休憩室のバルコニーを出たあと…
再び玲央くんの腕を組んで廊下を歩き私の部屋の前まで辿り着いた。




「クスッ…ごめんごめん、そんなに困った顔しないで?」


玲央くんはそう言って私の頭を撫でる。



「っ…」




玲央くんの手…温かい…。離れたくないよ…。




「じゃあ……また明日ね?」


そして後ろを振り向きそうだった、



その瞬間…―、




ガシ…ッ




「待って…」


私はギュッと玲央くんの腕を掴んでいた。



「未亜ちゃん…?どうかした…?」



「……。今日はずっと……そばにいて…?」




……



『今日はずっと……そばにいて…?』




えぇ…っ!?




「えっあっ、ごめんっ…今の忘れ…っ」



「…いいよ。」


自分で自分の発言に驚き慌てて玲央くんの腕をパッと離すと…今度は彼にその手を握られた。



「へっ…?」



「ん…?聞こえなかった?」


その発言に少し驚きながら玲央くんを見上げると彼は不思議そうに首を傾げてそう言う。



「っ……そうじゃなく、って……ほんとにいいのかな?って思って…」


首を左右に振って私はそう答える。




だ、だって…私が突発的に言っちゃったことなんだもん…。
“迷惑”とか…“めんどくさい”って思われたくないんだもん…。




「そんなの当たり前じゃん。…未亜ちゃんの“お願い”なんだから」


そんな思いとは裏腹に…玲央くんは私に優しく微笑んだ。