「…玲央様、おかえりなさいませ。」


駐車場まで辿り着くと宮崎さんが車の傍で立っていた。
そして玲央くんの姿を見つけると…彼にお辞儀をした。



「ただいま。…あ、そうだ。宮崎さん、この荷物だけ先に持って帰ってくんない?」



「はい。…かしこましました」


そう言って宮崎さんは車に彼の荷物を詰め始める。



「ぇ…私たち、は…?」


何だか次の展開が読めなくて玲央くんにそう聞いてみる。



「…デートしよう。いいでしょ?」



「え…!?うん、嬉しい…!ありがとうっ」


突然な提案に私は心の底から喜んだ。




え、いつぶり…!?ほんとに嬉しい…っ!!!




「っていうことだから。あとはよろしく」



「はい。…気をつけて行ってらっしゃいませ。」


宮崎さんの言葉を背に受けながら再び歩き出す―。





しばらくして…都会的な雰囲気の漂う街中へとやって来た。




いつも見ているはずの景色なのに…


玲央くんが隣にいるっていうだけで…全然違って見える。
これって何でなんだろう…?すっごい不思議だよ…。




「っ…!」




あっ…!


もしかしてこれが…“恋の力”っていう、やつなのかな…?
それに二人でいることが、こんなにも幸せなことだなんて…


前はそんなに思わなかったかもしれない…。




「…どうした?」



「え!?なに…?」


急に声をかけられて少し驚く。



「え、いや…未亜ちゃんが腕組んでくるなんて珍しいなっと思って。…ただそれだけ。」



「っ…!!」


玲央くんに言われた、たった今…ようやく気がついた。
私は知らぬ間に彼の腕を組んでしまっていた…らしい。



「えぇっ…ご、ごめん…っ」



「いいって。何で謝るの?」


腕を離そうとしたら逆にその手を掴まれた。



「ぁ、じゃあ…このままでも…いい…?」



「…もちろん。」



「ありがとう…っ」


優しく笑ってくれる玲央くん。
私はそれに甘えようと思った。




無意識の内にそんなことをしていたなんて何だか恥ずかしいけれど…
でも…“もう離れなくていい”って、きっと身体も分かっているんだ…。


だから勝手に腕が動いて…玲央くんの腕を組んでいたのかも…―。