―夜。
私は歩実ちゃんの部屋に呼ばれた。
カーペットの上に向かい合って座る。
「ごめんね…?急に呼び出したりして…」
苦笑いを浮かべる歩実ちゃん。
「ううん…」
「私…未亜ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ…」
ドキン…ッ
「うん……なに…?」
「あのね?私…玲央が好きなんだ…。未亜ちゃんと玲央が出会う、ずっと前から…」
“なに?”って聞いたけれど…それを言われるような予感がしていた。
歩実ちゃんは、ゆっくり確かめように静かに話し始めた。
「…っ」
やっぱり、そうなんだ…。
そう思って私は俯く。だけど…
「で…今日言ったんだ。“玲央が好き”って…」
「え…!?」
その歩実ちゃんの声に驚き顔を上げた。
「まぁ結果は当然ダメだったけど…でも今は…ちゃんと言えてスッキリしてるんだ。今まで…ずっと言えなかったことだから…」
「……」
そう言う歩実ちゃんに私はただ耳を傾けることしか出来ない。
今の歩実ちゃんの姿が…今日の翔くんと重なる…。
二人とも…ずっと好きな人がいて…でもそれを言えなくて…。
そしたらいつの間にか…その人には大切な人が出来ていて…。
「私ね…?玲央の家で未亜ちゃんに初めて会った時…すごいビックリして…すっごく泣きそうだったの…。
“何で私じゃないんだろう?”って…“私の方が、ずっと前から玲央の傍にいたのに”って…本当にそう思った。
だけど…毎日のように2人のことを見てて…分かってきたんだ…」
顔を伏せて話を続ける歩実ちゃん。
「……」
じゃあ、あの時の私は…歩実ちゃんのことを傷つけてたの…?
そんなのも知らずに…“私の玲央くん返して”なんて思っちゃった…。
私…最低だ…。歩実ちゃんを…傷つけてばかりいる…。