―そのあと。


翔くんとは別れて、エレベーターで最上階の部屋まで向かう。




「ぁ…玲央くんっ」


すると…ちょうど部屋の前にいる彼の姿を見つけて駆け寄った。



「あ、未亜ちゃん。いま帰りだったの?」



「ぅ、うん。ちょっと用があって…」


玲央くんにそう聞かれた私は俯きながら翔くんとの会話を思い出す。




『だって、みぃはさ…里原のことが好きなんでしょ?信じてんでしょ?』



『だったら大丈夫。だから、みぃは…里原だけ、見てたらいいから。ね?』




翔くん…。翔くんの言葉…信じるね…?




「あ、そうなんだ?」



「うん…」




ぎゅ…っ




返事をしたと同時…玲央くんの腕を両手で掴んだ。



「離れないでね…?」


そして…聞こえないぐらい小さな声で呟く。



「ん…?何か言った?」



「ううん、何でもないっ」


玲央くんのそんな声が聞こえてきて私は彼を見上げた。



「そ…?それより…珍しいね?」



「え…何が…?」


玲央くんの発言の意味が分からない。



「…こーれ。未亜ちゃん自ら掴んでくるなんて」



「いっ…いいでしょ…?//」


私が掴んでいる腕を玲央くんは上下に軽く揺らす。
そんなことを言われてしまって恥ずかしくなった。



「別にダメなんて一言も言ってないじゃん。俺は嬉しいよ?未亜ちゃんが甘えてくれて」



「//…」





この時の私は…本当に鈍感だったと思う。


翔くんがどんな思い、どんな気持ちで私を励ましてくれていたのかなんて…
全然…気づきもしなかったのだから…―。