―それから。


場所を寮の休憩室に移して、2人でベンチに座る。




「あの…あのね…?歩実ちゃんって知ってる…?白石 歩実ちゃん…」



「しらいし…?って、どんな子?」



「えっと…翔くんと同じ日に、転校してきた子…」



「ん…?あぁ~…あの子か!その子がどうかしたの?」


私が彼女の説明をすると翔くんは思い出したように言葉を発した。



「うん…歩実ちゃんてね…?玲央くんの幼なじみなんだって。それで…歩実ちゃんに初めて会った時、思ったんだ…」



「何を…?」




“何を…?”



とうとう核心をつくことを言ってしまう恐怖を感じる。



「歩実ちゃん…玲央くんのこと好きなんじゃないかって…。それで私自身がそう思っちゃってるから…玲央くんと歩実ちゃんが喋っている所を見るのが嫌だなって思っちゃって…。

 だけど…そう思う自分も、もっと嫌なの…っ!!歩実ちゃん、優しくていい子なのに…」


私は話しながら段々と俯いていた。




ほんとにそう…。


たった数日だけど…歩実ちゃんと何度か話して思った。
歩実ちゃんは…本当にいい子。誰にでも隔たりなく話せる。




「う~ん、そっか…でも大丈夫だよ、きっと」



「へっ…?」


翔くんのその言葉に私は顔を上げた。



「だって、みぃはさ…里原のことが好きなんでしょ?信じてんでしょ?」



「……うん…っ」


翔くんのその言葉に、ゆっくり頷く。



「だったら大丈夫。だから、みぃは…里原だけ、見てたらいいから。ね?」


翔くんはそう言って私の頭をポン…と軽く撫でた。



「うん…ありがとう、翔くん…」