その時、だった―。




カチャ…ッ




「ぁっ…」




玲央くん…。




(タイミング悪く?)玲央くんが現れた。



「玲央!!どうしてあなたは約束が守れないのっっ!?」



「えっ何…?俺、何かしたっけ?」


そう言いながら玲央くんの方へ向かっていく彼のお母さん。
一方、彼の方は…全く意味が分かっていないようだった。



「何かした?じゃないでしょう!?未亜ちゃんの首筋にキスマークをつけたの…分かってるんだからねっ!?」




ギク…ッ




や、やっぱり…バレてる…。




私の予想は見事に的中。


私はこれを洗面所の鏡で見た時に見つけて…どう頑張っても隠せない場所だから…バレるのはもう時間の問題だと腹をくくっていたりした。




「あぁ~…そのこと?」


怒られているはずなのに玲央くんの反応はいつもと変わらない。



「開き直るんじゃありませんっ!!昨日約束したでしょうにっ!!」



「開き直るって別にそんなつもりじゃ…てか約束なんてしたっけ?」



「もう!何を寝ぼけたことを言っているの!?“未亜ちゃんを襲っちゃダメよ!?”って忠告したでしょう!?」


玲央くんのお母さんが怒る声。
それに屈しない玲央くんの声。




玲央くん…ちょっと可哀想だなぁ…。でもでも…!
あれは玲央くんが悪いもん!!怒られて当然だよっ!!




「…ねぇ、お姉ちゃんっ」


玲央くん親子の様子をずっと見ていると、
いつの間にか隣にいた美久に呼ばれた。



「っ…」




てかこの子…ちょっとニヤニヤしてるし。
すごい、っていうか…かなり嫌な予感…。




「な、なに…?」



「何で玲央さん、怒られてるの~?」



「さぁ~…何でだろうね?私には分かんないや」


無邪気に聞いてくる美久に私は必死で知らないフリをする。



「ふ~ん………てかこれ、なぁに~?」



「ふぇ…っ!?」


美久はそう言うと私の首に指を当てた。あの…“印”がある所に。