―玲央くんの部屋に入ると。




バン…ッ!




「っ…!」


私はドアを背にして彼に押しつけられた。



「えっ…!?な、なに…?」



「元気ないよね…?何かあった?」




ギク…ッ




図星をつかれて内心、焦ってしまう。



「べっ…別に何もな…っ」



「何もない訳ないでしょ?さっき、ため息ついてたし。ねぇ…嘘つかないでちゃんと答えて?」


心配をかけたくないと思ったけど…彼は間髪いれずに聞いてくる。
玲央くんには全て…私の心を見透かされているような気さえした。



「…っ」




何で玲央くんには…私の気持ち、すぐバレちゃうの…?




「あの、ね…?

 私の勘違いかもしれないんだけど…さっきの歩実ちゃん…
 玲央くんのこと好きなんじゃないかなって思っちゃって…」


私を思ってくれる玲央くんを思うと涙が出そうになったけれど…
涙を堪えながら思っていたことを彼に話した。



「歩実が…?俺を?」



「うん…。あ、でもでも…!それは勘違いかもだし…。

 私がこんなこと言っちゃったせいで玲央くんと歩実ちゃんの関係が壊れるのとか絶対に嫌だから…だから歩実ちゃんには…絶対に言わないで…?」




自分の発言が原因で…


大切な人と、その人が大切に思う人との関係が壊れちゃうなんてこと…
そんなの私には…絶対に耐えられないだもん…。



だって玲央くんには…毎日笑顔でいてほしいから…。




「未亜ちゃん…」



「っ…」


その瞬間…私は玲央くんに抱き締められた。



「分かったよ、歩実には絶対言わない。でも…これだけは覚えてて?」


玲央くんが私を離し…視線が交わる。



「俺は…未亜ちゃんだけが好きだから」



「本当に…?」



「うん、ほんと。」



「じゃあ……ここでキスして…?」




ま、待って…!勢いに任せて何言っちゃってるの…!?




「いいよ?」



「っ…」


玲央くんの顔が段々と近づいてきて、そのまま唇にキス―…。
触れるだけの優しいものかと思うと…決してそうではなかった。