研修が始まって1週間。
毎日、夕方までの研修は充実していた。
ホテルに帰ると寂しさが込み上げてくる。
毎日の電話によって少しだけ元気になれる。
沙知は、俺がいなくても大丈夫なのかな?と不安になったりする。
沙知は明日から、学校だ。
どんな顔をしてあいつに会うの?
今はどんな気持ち?あいつは・・・今でも沙知が好きなのか?
頼むから俺らの邪魔をしないでくれ。
せっかく手に入れたのに・・・。
お願いだから・・・。
沙知、俺の側にいてくれ。
今日もいつものように電話をする。
俺は一つ決意したことがあった。
その事をいうことによって、彼女が離れていったとしてもしかたない。
「もしもし、沙知?今大丈夫?明日から学校やね」
『うん。準備もしたし大丈夫』
さっちゃんの声は明るい。
「俺さ、やっぱり言っておかないとあかんと思って・・・」
もう戻れない。
俺は話した。
先生も君のことが好きやったけど、君のことを考えて告白を受け入れなかったこと。
俺に話す先生の目には涙が浮かんでいたこと。
先生が君を見つめる瞳はとても柔らかくて、生徒を見る瞳ではなくて、好きな人を見る瞳であったこと。
「だからさ、俺の事は気にしなくていいから」
なんで俺はこんなことを言ってるんや。
誰にも渡したくないのに。側にいてほしいのに。
「じゃあ、沙知、明日から頑張ってね」
もう泣きそうや・・・。
『隆・・・もう・・・』
もう・・・。
なに?
電話しないで?
私の前に現れないで?
何て言いたいの?
もう突き放してくれ。
「また明日、電話していい?」
なぜか俺はこんなことを言っていた。
『うん。もちろん』
なんで、拒否してくれへんの?
「ありがとう。愛してるよ、沙知」
『うん』
電話を切って、こらえてきた涙が一気に溢れてきた。
最後に初めて『愛してる』って言ってしまった。
しかも、『うん』ってなんやねん。なんで肯定するんや?
期待してしまうやんか・・・。
でも、きっと、もう終わりなんやね。
沙知、ありがとう。