スタートライン~私と先生と彼~【完結】

「ははは〜。盗み聞きするつもりはなかったんだけど・・・耳に入って来て・・・。

ってか、原田、お前モテるんだな〜。

お、奥村もいい奴なのになんで断ったんだ?彼氏でもいるのか〜?」

なんて、ベラベラと話すべき空気ではないのに、口から気持ちの入っていない言葉が出ていく。

全く空気読めてないし!

こんなことを言いたいわけじゃない!

「彼氏なんていないけど、好きな人がいるんで・・・」


静まり返った二人の空気を切り裂くように、小さな声で発し、走って出て行ってしまった。 さっきまでは涼しく感じられていた風が、やけに冷たく感じた。


『好きな人がいる』


俺はその言葉に撃沈した。

原田も普通の高校生だから、好きな人がいることは、不思議な話ではない。

でも、聞きたくなかった・・・。

しかも本人の口から・・・・。


あまりにも俺自身が動揺していたので、彼女が涙を浮かべていたのに気付いたのは、しばらくしてからだった。