スタートライン~私と先生と彼~【完結】



神社は初詣客でごった返していた。

だから、はぐれないように、服の裾でも持っておいてもらおうと思った。


「さっちゃん、はぐれるとダメだから俺の服でも掴んでて」


と肘を出したのだが、さっちゃんの手は、俺の服を掴んでくれなかった。


・・・・・・えっ??


俺、手を繋ごうなんて言わなかったよな?服を掴んでって言ったよな?

どうして、手を握ってくれてるの?


そう、さっちゃんは俺の服ではなく、手を握ってくれている。


予想外の反応に、俺も驚き、思わずさっちゃんの顔を見てしまった。

俺の表情があまりにも滑稽だったのか、さっちゃんが吹き出して笑っていた。


「いや・・・・・・手を握ってくれるとは思わなかったから・・・・・・」

「えっ?だって隆が、手を出してくれたから・・・・・・」


「服を掴んでって聞こえてなかった?」

「えっ?」

さっちゃんは、「何て言ったの?」とでも言いたそうな表情で、俺を見るとなにやら考えているようだった。

こんな慌てたさっちゃんは見たことがなく、つい吹き出してしまった。



「あっ、ごめん」

さっちゃんは、俺の手を振りほどこうとしたが、そうはさせなかった。

俺は、さらに強く手を握った。

おそらく、少し考えていたら手を離しただろう。

考えるよりも先に手が動いていたのに一番驚いたのは、俺自身だろう。


「はぐれるから、ダメやで」

動揺を隠すように、いたずらっぽく笑うと前に進んだ。