スタートライン~私と先生と彼~【完結】

「今帰りか?気をつけて帰れよ」

放課後、教室の鍵を返しに来た原田に、教師の声で言った。


「先生、今回のテスト難しすぎですよ。みんな結構、凹んでましたよ」

彼女が言っているのは、俺が作った実力テストの話。


俺は、高橋先生に言われた通りに、難しい問題を作った。

これも受験のためだと思いながらも、原田がどれだけ取れるかを楽しみにしていた。彼女は断トツで学年トップの成績で、200点満点中、180点を取っていた。

残りの20点も、途中までは解けていたが、なんせ問題数をやたらと多くしたので、時間が足りなかったのだろう。


「そっかぁ?お前に満点取られるのが嫌だったから、難しくしたんだよ」

「うわっ、先生意地悪!」

頬を膨らませて怒っている顔もかわいい。

しかも、『意地悪』なんて言われると、余計に虐めたくなってしまう。そして、俺は、あろうことか『触れたい』と思ってしまった。

「・・・冗談、冗談」

原田の頭を優しく撫でた。

俺が今の立場でできる精一杯の行為だ。本来なら、やってはいけないのだろうが・・・・・・。

 しかし、そんな理性に反して、少しでも触れてしまったことで、さらに欲張りになってしまうのも事実である。