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「さっちゃん、デートしよう!」
勉強漬けの私に隆が誘ってくれた。
特に目的なんてないけど、ただ歩いているだけで楽しい・・・・・・はずの休日が、ある一言で一変した。
「原田せんせ〜」
聞き覚えのある声に嫌な予感がしながら、振り返った。
「み、三島くん・・・」
やっぱりだ。顔が引き攣りそうになる私に対して、満面の笑みの三島君が立っていた。
「せんせ〜、こんにちは」
軽い。今日は、私服だから、余計に軽く見える。
「こ、こんにちは」
余裕の高校生に対して、動揺する私。完全に負けている。
「せんせ〜の私服初めて見たよ。かわいいね〜」
恥ずかしげもなく三島君は、私を褒める。
きっと、隣に隆がいるからわざとだ。
「はい、はい。ありがとう」
「せんせ〜、冷たいなぁ。でもそういうところも好きやで。あれ?隣にいるのは彼氏さん?」
「そうよ」
とにかく、早く立ち去って欲しいのに、隆のことを聞いてくる。
面倒なことになりそう・・・・・・。
「はじめまして。僕は原田先生の生徒の三島です。せんせ〜の彼氏かっこいいですね」
もう本当に余計なことを!
ちらっと隆の様子を伺うと、表情は穏やに笑っていた。
おそらく、イライラしてるんだろうけど、私の生徒だということもあって、おとなしくしているのだろう。
「でも、俺の方が背が高いし、かっこいいですよ」
隆より10センチ程高い位置から見下ろすように、言う様は憎たらしい以外のなにものでもない。
「三島くん、何を言ってるの?私はあなたには興味ないから」
冷静に言ったつもりだったが、内心は焦っていた。その証拠に、背中に変な汗をかいている。もう勘弁して。
「ふ〜ん」
どうして、こんなに余裕なのこの子は!
彼の試すような仕草に一言言ってやろうと思っていたら、隆が口を開いた。
「三島くん、しつこいと嫌われるよ」
三島君以上の余裕を見せて、隆は、フッと笑いながら言った。その瞬間、三島君の表情が初めて歪んだ。
「余裕ぶっているのも今のうちですよ。
年上だろうが、年下だろうが、先生だろうが、生徒だろうが関係ない。
僕は先生が好きなんです」
また、この子はストレートに・・・・・・。
私は、大きく息を吐き、彼をなだめるように話し始めた。
「それは違うよ。年上、年下は関係ないけど・・・。先生と生徒は・・・世間からはあまり認められるものじゃない。だから、私は受け入れることはできないんよ」
私の言葉に三島君も隆も黙ってしまった。
そりゃそうよね、私がこんなこと言うなんて予想もしなかっただろうし。
「まぁ、私と付き合いたかったから、卒業まで好きでい続けるんやね。あと2年やね。無理でしょ?」
挑発するように言ってやると、三島君は下唇を噛んでいた。悔しそうに・・・。
でも、大人を舐めてたらあかんってところを見せておかないとね。
「わかった」
そう言う彼は、なんだか頼もしく見えた。
きっと、無理よ。たった3週間の教育実習生のことを好きでいるなんて。
それも、私は、もうすぐあなたの前から姿を消すんだから。
そんなことを思っていると、隆が思わぬことを話し始めた。
「好きな人が他の男を見てるってのは・・・辛いぞ?」
その言葉に私の心臓は強く掴まれたような感覚に陥った。
息が上手くできない。
でも表情に出してはダメ。
三島君に表情を見られないように、隆の顔を見つめた。
私の心配はよそに、三島君は私の表情よりも、隆の言葉に反応していた。

