5月に入ると教育実習が始まり、私の生活は一変した。
大学で研究をしているのとは勝手が違い、大変。
でも、新鮮な毎日を過ごしている。
私の実習先の高校はこの辺りでは一番の進学校である。
それでも自由な校風のせいか、みんな勉強ばかりしているという雰囲気ではない。
まるでうちの高校みたいやな・・・。
レベルは違うけど・・・。
授業を始める時にスーツの上着を脱ぐ先生
やたらと難しい実力テストを作る先生
大きな声で笑う先生
そっと頭に手を置いてくれる先生
私の相談に乗ってくれる先生
大きな口を開けてお弁当を食べる先生
きれいな字で板書する先生
思い出すのは・・・先生のことばかり。
先生・・・なんであの時、泣きそうな顔をしてたの?
私の気持ちを言わせてくれなかったの?
笑って断ってくれたらよかったのに。私の中にひょっこりと現した人は、なかなか私の中から出ていってはくれなさそうだった。
化学準備室でそんな思い出に浸っていたら、ある男子生徒が私を訪ねてきた。
「失礼します」
たしか私の担当クラスの・・・
「三島 和典(みしま かずのり)です」
そう、三島くん。
茶髪にピアス、制服も着崩している。
顔はかわいい系だけど、その顔に似合わず背は高い。
「どうしたの?質問?」
私は突然の訪問者に優しく声を掛けた。
「はい。先生は、彼氏いるの?」
何を聞くんや?この子は・・・。
こういう子には、誤魔化すと余計に寄ってくるだろうから、はっきりと答えた。
「いるよ」
さらっと言う。
「やっぱり〜。でも僕さ、原田先生の事が好きになってしまった!」
突然の訪問者は、突拍子もないことを言い始め、私は動揺してしまった。
「はぁ?」
私のことは気にせずに、三島くんは話を進める。
「じゃあ、あと2週間で彼氏から奪うからね〜」
悪戯な笑顔で言うだけ言って、出て行った。
なんなんよ!あの子は!・・・・・これは隆に言うべき?

