「母さん、涼は?」
隆が聞く。隆には2歳離れた妹さんがいる。
「涼、楽しみにしてたから、呼んでくるわ」
お母さんが2階へ向かった。
「さっちゃん、隆が迷惑かけてない?」
えっ?お父さんまで『さっちゃん』なの??
「は、はい。私の方が迷惑をかけてばかりです」
「隆は強情なところがあるからなぁ」
「父さん!」
仲がいいんやなぁ。とてもいい親子やな。
2階では、「りょう~早く降りてきなさい」と呼ぶ声が聞こえると、「は~い」と返事があったかと思ったら、すぐにバタバタと階段を降りてくる音が聞こえた。
「こんにちは!」
後ろから声がしたので振り返ると、目の前にはかわいらしい女の子。
あれ?どこかで見たことあるような・・・。
「あっ!あの時の!」
私と涼ちゃんは声を揃えて言った。
「えっ?何?お前ら知り合いなわけ?」
隆が驚いたように私と涼ちゃんを交互に見た。
「私が中二の時に、電車で痴漢に遭ったって言ってたでしょ?」
涼ちゃんは興奮気味に、早口で説明した。
「そういえばそんなことあったなぁ」
お父様が、思い出すかのような口ぶりで答えた。
「まさか、その時に、助けてくれたのが・・・さっちゃん?」
目を丸くした隆は、私の方を向いて確認するように聞いてきた。
だが、答えたのは、涼ちゃんだった。
「そう」
そうだ。思い出した。

