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大学生活も残り1年半。
少し前まで鳴いていた蝉がいなくなったと思ったら、もう秋の虫たちが鳴いている。
最近では、朝晩は涼しいというより肌寒くなってきた。
私たちは、本格的に進路を考えなくてはいけない。
教授からは大学に残って研究を続けないかと言われたが、その気にはなれなかった。
やはり私は、教師になろうと思う。
教授が定期的に行っている、高校への出張授業に付いていった時、生徒達の目の輝きを目の当たりにして、この子達に化学の楽しさを教えてあげたいと思ったから。
だから、来年は教育実習が待っている。
卒業研究のこともあるので、地元ではなくこっちの高校で実習を受け入れてもらった。
その事を話すと、隆はまた安心したようだった。
彼はいったいどれだけ不安になるんだろう。
そんな不安を払拭したいのか、隆が私にあることを話し出した。
「年末年始に帰省する時に、さっちゃんのご両親に挨拶したいんやけど・・・」
そう話す隆顔は真剣そのもの。
以前、隆はうちの母と弟に会っている。
その時はまだ付き合っていなかったが、それでも二人で勝手に盛り上がってた。
あのテンションの高い家族に会わせるのは、いささか勇気がいる。
でも隆としては、両親に黙って付き合うのも気がひけるのだろう。
「うん。わかったよ。でも、私も隆のご両親に挨拶をさせてもらうね」
「うん」
隆は嬉しそうに頷いた。

