3年生は2限目からの登校。
まだ渡そうかどうするか迷っている私。
かばんの中のチョコが、『渡してくれ』と言っている。
私が歩く廊下の少し先に先生がいた。スーツを肩に掛けて歩いてる。
何かたくさん荷物を持っているのか、いつもより歩くスピードが遅い。
どうしよう・・・。
考える前に足が動いていた。
「せんせ〜!」
私は先生の背中を叩いた。
先生は両手いっぱいに持っていた荷物を落としてしまった。
「せんせ〜。ごめんなさい」
「お前な、いきなり叩くなよ!」
先生は笑いながら言ってくれた。
廊下に散らばっているのは、生徒からもらったであろう、チョコの山。
こんなにいっぱいもらってるんや・・・・。
「先生がこんなにいっぱい持ってるから。普通、大きな紙袋とか用意しない?」
「俺、こんなにもらったことないし。」
「ふ〜ん。じゃぁ、彼女だけなんやね〜」
なんで自分が傷付くような事を聞くんよ!
「まぁね、でも去年別れたし」
「ふぅん」
そういえば前に『彼女いない』って言ってたな。
全部拾い終わった時、先生の言葉に驚いた。
「あれ?原田からは??」
「せんせ〜、こんなにもらってまだ欲しいんですか??糖尿病になりますよ」
上手くごまかせたことに安心した。
先生の言葉、冗談っぽかったけど、あの目は・・・真剣な話をする時の目だった。
その目に吸い込まれそうになったが、堪えて堪えて・・・冗談ぽく返すことができた。
でも、それ以上は先生の顔は見ることができなかったので、走って逃げた。
私は、チョコを拾うフリをしながら、自分のチョコを紛れ込ませていた。
私のだとばれない方がよかったが、あいにく手紙を入れてあるから、ばれるのは時間の問題。
後から、自分がしてしまったことに後悔に近いものを感じていた。
先生は、どう思うんだろう・・・。
いや、あのたくさんのチョコレートの中の一つとしか思わないんだろうな、そう考えると、ため息しか出なかった。

