スタートライン~私と先生と彼~【完結】




あれから、大好きな数学の時間が来てほしくなくなった。

あんな事を言われても、嫌いになんてなれない自分が悔しい。

先生は、私の気持ちなんて知らないから、あんな風に言われてもしかたないのだけれど、それを理解できるほど、大人じゃなかった。

私は、先生の顔を見ると泣いてしまいそうだから、外を眺めている。

どうせ、先生は私を注意しないとわかって、よそ見する。




その日の放課後、廊下を歩いていたら、先生が前からやってきた。


きっと先生はなんとも思ってないし、私が泣いていたのも気付いていない。


「さようなら」


いつも通り、挨拶をしてすれ違おうとしていたら、呼び止められた。


「原田!」

「はい!」


私は驚いた顔をしていたに違いない。呼び止められるなんて思っていなかったから。


「原田、この前はごめんな。場違いな事を言ってしまって」


先生は、謝ってくれた。

その照れ臭そうな顔がなんともかわいらしくて、笑いを誘う。


「せんせ〜、そんなことを気にしてたんですか?」


自分で言った言葉に驚いた。


「お前、泣いてたじゃないか・・・」


先生、気付いてたんや・・・。


「あっ、あれね、コンタクトにゴミが入って泣いてたんですよ〜」


精一杯の強がり。


「そ、そうだったのか・・・てっきり俺が泣かせたのかと思ったから」


「せんせ〜、優しいですね。みんなに好かれるはずやわ。ありがとうございます。」


そう言い、ニッコリ笑った。


「いや・・・よかった」


先生の顔からは、不安が取れていった。


「せんせ〜最近、練習見に来てくれてないでしょ。もうすぐ、本番だからちゃんと見ておいくださいね!」


とだけ言い、後ろを向いた。


嬉しくて涙が出そうなのを隠したかったから。


私、女優にでもなれるんじゃないかと思うくらい、演技をしてた。


多分、ばれていない・・・。


理由はともあれ、先生も少しは辛い思いをしていたんだと考えたら、ちょっとだけ気持ちが楽になった。


昨日一日だけでも、私のことを考えてくれたんだと思ったら自然と笑みが零れていた。